先日ある作家さんがTV番組で語っていた太宰治氏の“人間失格”の解釈の仕方がとても印象に残り、この作家さんのことがとても好きになりました。
彼が“人間失格”を初めて読んだのは中学2年生の時だそうです。友人から「お前みたいな奴が出てくる」と言われ文庫本を渡され読んだところ不思議な魅力に取りつかれ、それ以来事あるごとに読み返し、これまで100回程読んでいるそうです。
そして、以下のような解釈を持つようになったそうです。
「“人間失格”は、こんなかわいそうな俺が辛い目をしながらそれでも生きてきたんですって解釈して読んでいる人が多いんですけど、僕はそうじゃなくて、人間がそれぞれ持っている痛みについての話しやと思ってて・・・。
痛みってみんなあるじゃないですか。凄い純粋で凄いかわいくてまっとうに生きている少女の歯の痛み、“かわいそう”って同情するじゃないですか。でも悪人の歯の痛み、同じように歯が痛かったとしても、“そんなもんは自業自得や”って言うじゃないですか。
それは感情的にはそうやないかもしれんと思うんですけど、痛みっていうもんはあるんですよね。
僕らはいつも自分の悩みがある時に、世界中にはもっと大変な人がおんねんやからって言って悩むことすら許されないということがあるじゃないですか。必ず誰かと比較されて・・・。
それは本当にそう思うし、自分より大変な人はいっぱいいるんですけど、じゃあいっぱいいるんやからと言って自分の悩みとか痛みとかを無かったことにせなあかんのか?って・・・この本はそういうことについて書かれているんやないかと。」
私は“人間失格”を読んでいないので、彼の解釈が他の人の解釈に比べどうかというのは分かりりません。
ただ以前私が心に抱きながらも口に出せなかった思いを、彼が代わりに言葉にしてくれたように思えたのです。それによってもやもやした気持ちがすぅーっと晴れたような気がしたのです。
4年前、私達夫婦にとってとても大切な人が病気で亡くなり、2人してとても落ち込みました。そんな時友人の一人に
「震災で家も家族も無くなった人もたくさんいるのだから、そんなに悲しんでちゃいけない」
と言われたのです。
彼女は私達を励ますためにそういう言葉をかけてくれ、彼女が言ったことも頭では理解できました。しかし、悲しみは減るどころか、「悲しんでいる私達は弱い人間だ」と言われたような気がして、彼女の言葉は私達を苦しめました。
死の悲しみは時間が解決してくれました。でもどこかすっきりしない思いが残っていました。でも、この作家さんの
「悲しみは他人と比較して打ち消されるものではない。」
という言葉を聞き、TVの前で一人で
「その通りなんだよ」
と何度も何度も言ってしまいました。
さて、この作家さんは先日芥川賞を受賞したお笑い芸人の又吉直樹さんです。きっと他人の痛みが分かる心の豊かさを持っている人なのでしょうね。「火花」読んでみたくなりました。
投稿者プロフィール

- 留学したパリで縁あって仏人と結婚。約10年間日本で結婚生活を送った後、2012年にブルターニュへ移住。航空業界・旅行業界での勤務経験を活かし、モン・サン・ミッシェルとレンヌで日本人グループの通訳兼アシスタント業に従事。趣味は彫金、ジェルネイル、教会巡り、自然散策。訪れたブルターニュの教会は50超!?
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